「クラーク!」

ジャスティンは痛む手を我慢しながら、クラークに近寄ると、左手で胸ぐらを掴んだ。

「どうして、攻撃しなかった」

食って掛かるジャスティンから、クラークは視線を外し、

「サラに、攻撃の意思はなかった…」

呟くように言った。

「き、貴様!」

ジャスティンは、胸ぐらを持ち上げた。

「チャンスだっただろうが!」

その言葉に、クラークはジャスティンの左腕を掴むと、振りほどいた。

「お前は!勝ったつもりでいるのか!ギラは、能力を使ってなかった!お前に、合わせて戦っただけだ!」

そして、ジャスティンを睨みつけ、

「油断もしていた!だがな!次は違う!ギラもサラも、本気で来る!」

「わかっている!」

ジャスティンも睨み返した。

「嘘つけ!」

クラークは、ジャスティンの右腕を掴んだ。

「ク」

それだけで、顔をしかめるジャスティン。

「捨て身の攻撃で、拳を壊したお前が!戦えるか!」

「それでも、戦うのが人間だ!命がけでな!やつらを倒せたら、多くの人々の希望になる!」

「勝てなかったよ!それに、命をかけるのは、今ではない!今回の我らの目的は!女神を倒すことだ!」

「う!」

クラークの言葉に、ジャスティンは何も言えなくなった。

「チッ」

舌打ちすると、クラークが掴んでいる手を振り払った。

「わかったよ!女神を倒せばいいんだろうが!」

クラークの言うことも理解していた。だけど、許せない部分があったのだ。

砦に向けて歩き出そうとしたジャスティンに、クラークは声をかけた。

「待てよ」

クラークは、右手を差し出した。

「拳…治してやるよ」

左手には、カードを持っていた。

「…ああ」

ジャスティンは数歩、歩くと足を止めた。頭をかくと、ふてくされながらも、右手を差し出した。

「…」

無言で、クラークは治癒魔法を発動させた。

「…」

拳が回復しても、しばらく2人に会話はなかった。