「数時間前の俺と同じと思うな」

ギラに背中を向ける体勢で立つジャスティン。

「こ、小わっぱが!」

無防備に背中を向けるジャスティンに、ギラは拳を振り上げた。

そのまま、ジャスティンの背中を突き破るはずが…ギラは目眩を覚えて、前のめりに倒れた。

「な」

「つ、強い…」

一連の動きを見て、クラークは目を見開いた。

ずっと一緒にいたクラークの目から見ても、ジャスティンは先程と別人の強さを身につけていた。

(あいつは…戦いの中で、成長する!それも、数段上のレベルに!)

絶句しているクラークよりも、その強さを身を持って味わったギラの方が、驚いていた。

「ば、馬鹿な…」

ジャスティンの顎先の蹴りで、ギラは脳を揺らされたのだ。

「あ、あり得ん…」

ギラは頭を振ると、手で地面を抉りながら、何とか半身を上げた。

「あんたには、感謝している」

ジャスティンは、体をギラに向け、半身だけを上げたギラを見下ろし、

「自分の弱さを実感できた。だからこそ、俺はさらに強くなれた」

「そ、そんな!短期間で!強くなるものか!」

人間のガキに見下ろされている屈辱が、ギラを一気に立ち上がらせた。

「あんたは…人間をわかっていない」

ジャスティンは、ギラを見上げた。

「わかっておるわ!」

ギラは、拳を突きだし、

「我が拳で、簡単に砕ける程の弱き体と!我を見て、逃げることしか考えぬ!弱き心を持つ!虫けらよ!」

ジャスティンを睨みつけた。

「そうだな」

ジャスティンも拳を突きだした。そして、ギラに笑いかけると、

「人間は弱い…。だけどな。だからこそ、手に入れられる強さがある」

突きだした拳を握り締めた。

「ほざけ!小わっぱが!」

ギラは一歩前に出ると、ジャスティンに向けって、拳を振り上げた。

「フゥ〜」

ジャスティンは呼吸を、向かってくるギラと合わせた。

そして、

「フン!」

逃げることなく、ギラに向かって行った。