(愛する気持ち…か…)

底が見える程、透き通った水面に映る自分を見つめながら、ティアナは悲しく笑った。

自分も十代の女の子である…そういう気持ちに興味がないわけではない。

(だけど…)

そんなことに費やす時間が、なかった。

ライトニングソードという特別な武器を得て、モード・チェンジという技を身につけた時から、ティアナは覚悟を決めていた。

いつ…死ぬかわからないと。

それは、魔物との戦いの日々に身をおいているからだけではなく、モード・チェンジによる体の負担が大きかった。

戦いに勝利したとしても…体は壊れていっていると自覚していた。

ティアナは、水面に映る自分を睨みつけ、

(弱気になってはいけない!あなたは、まだ死んではいけない!)

自分に言い聞かせていた。

少なくとも、カードシステムが完成するまでは死んではならないと。

それだけは、自分しか完成できないと知っていたからだ。

(戦いに関しては…)

ティアナは、洞窟の天井を見上げ、

(あの子達が大きくなったら…きっと、あたしをこえてくれる)

近くにいるはずのジャスティンとクラークを、思い浮かべていた。


しかし、そんなティアナの願いは、今にも消えようとしていた。

砦へと向かおうとするジャスティンに、クラークが合流したのとほぼ同時期…。

彼らの目の前に、ギラが降り立った。

「あの女は、どこだ?」

ギラの顔を見た瞬間、クラークは戦慄した。

黒焦げになった顔は、明らかに自分達がつけたダメージではないからだ。

(誰に!?)

砦にいる仲間に、制裁を受けたと思った。

(だとしたら…)

クラークははっとした。

騎士団長に、制裁を与えることのできる人物は知れていた。

魔王ではないとすると、同じ騎士団長レベルだろう。

ということは…。

(騎士団長がまだ、他にいる!)

冷静に考えると、同じ空の騎士団長であるサラしか考えられなかった。

(2人もいるのか!)

そのことが、クラークを震えさせたのだ。