ティアナのカードが照らす範囲より、向こうまで歩いたグレイは、闇の中で足を止めた。

(くそ!)

そんなことを言いたかった訳ではない。

(お、俺は…)

グレイが、ここまで来たのは…ティアナと同じことをする為であった。

(リタ…)

グレイは、血が出るまで拳を握り締めた。

ティアナのやったとは、正しい。

それを認めながら、グレイは葛藤していた。


(君に…頼みがある)

グレイを、今回の案内人に依頼したのは…白髭の男だった。

彼から、ゲイルのことは説明を受けていた。

そして、自らの妹のことも。

(あなたにしかできないことです)

白髭の男は、最後に衝撃的なことを告げた。

(そうそう〜。核ミサイルによる最初の誤爆ですが…あれも、仕組まれたことかもしれませんよ)

グレイは、素性を隠していたが…特区の出身だった。

アンダーソンは偽名である。

グレイは、ずっと悩んでいた。

特区に核ミサイルが落ちたのが、故意だとしたら…許せなかった。

ティアナによって守られたが…その場で核ミサイルが爆破して、十字軍本部がなくなっても、仕方ないと思ったことだろう。

そして、今…繭の中で女神として培養されているのが、妹だった。

最初は、憐れな妹を殺すつもりだった。だが…故郷の末路をきいて、グレイの心に、人を憎しむ心が生まれていた。

(俺は…)

妹が女神として覚醒すれば、多くの人が死ぬだろう。

それが、特区の人々の怨みだとしたら。

ゲイルは、悩んでいた。

(このまま…死ねば、すべてを見なくて、すむのか)

だが、グレイにはできなかった。

なぜならば、彼は…妹を愛しているからだ。