そんなグレイの笑いに、自虐的なものを感じたティアナが、何か言おうとした時、グレイはギロッと睨んだ。

「あんたは…人を愛したことがあるのか?」

「え」

その質問を、ティアナは予想していなかった。面を食らったような顔をするティアナに、グレイは言葉を続けた。

「確かに、あんたは…人類の為を考えて、立派な人間だ。だけど、それは博愛だ!生き方としては、素晴らしい。すべての人間を!いや、敵も味方も愛し、許せるなど!理想だ!」

グレイは両手を広げ、

「あんたは、その理想を目指し、生きていくんだろうが!誰もが、そんなことができるか!誰よりも大切で、愛する者がいたら!そいつを不幸にするものがいたら、許さないと思うはずだ!」

グレイはそこで一旦言葉を切ると、歯を食い縛った。

「だけど、あんたは違う!祖父を殺した」

「!」

表向きは、祖父であるゲイルは魔物に殺されたとされていた。

「あんたは、肉親を殺したんだ」

「そ、それは!」

ティアナは、言い返そうとした。しかし、祖父を殺したことは、事実だ。

そうしなければ、核ミサイルは爆破されていた。

「だが、あんたのやったことは、正しいよ。それで、その周りにいた人間は、助かったんだからな」

グレイは、自分を指差し、

「俺も、その1人だ!その時、例の爆弾が爆破していたら、俺も死んでいた!だがな!周りの人間を救っても、肉親は救えなかったんだ!あんたは、人の命を天秤にかけたんだ」

「だけど…」

ティアナは反論しょうとしたが、顔を背けた。

あの時、ゲイルは自分を殺せと言った。魔物と融合している自分を。

「お、俺は…」

グレイも顔をそらし、

「あんたを責めているじゃない。正しい選択だと思っている。だけど…俺にはできない」

グレイはティアナに背を向けると、歩き出した。