前魔王であるレイの配下の時代、ライが最初につくったのが、ギラとサラであった。

自らの両腕として創られた2人の魔神は、魔王レイにも匹敵すると言われていた。

(ギラ様が、本気になられた!)

ギナムは震えながら跪き、動けなくなっていた。

その為、ギラがそばから消えたことにも、すぐには気付かなかった。






「どうしたんだ?」

暗闇の中、数えきれない程、蜂に似た魔物を斬ったグレイは、動きを止めた。

魔物がいなくなったのだ。

「何か…あったのかしら?」

グレイの数倍の魔物を倒したティアナは、洞窟の奥の暗闇に目を凝らした。

あれほどいた魔物が、いなくなっていた。

「罠?」

ティアナは一応、周囲を警戒しながらも、ライトニングソードを握る手を緩めた。

すると、さっきまで光輝いていた刀身の輝きが消えた。

一瞬、完全な闇になったが、すぐに灯りはついた。

ティアナがカードを使ったのだ。

「便利だな…これは」

グレイもカードを取り出した。旅の途中で、ティアナから受け取っていたのだ。

「でも、まだ完璧ではないわ」

現時点でのカードは、灯りをともしたり、炎や水…風を起こせたりするが、武器の召喚はできなかった。

以前とほぼ同じくらいに使えないと、意味はない。

あとは、魔物を倒さないと魔力が貯まらないのも何とかしたかった。

今のままでは、子供や老人は魔力が貯まらない。

(だが…凄いよ)

グレイはカードを見つめながら、ティアナ・アートウッドというすべての存在に感嘆していた。

魔力が使えなくなり、誰もが落胆し…下手すれば、滅亡の恐れすら感じている時に、彼女は真っ先に救う道を探していたのだ。

(それに…あの強さだ)

グレイは、ティアナをじっと見つめてしまった。

その視線に気付かず、ティアナは左側の奥へと歩き出した。

「ど、どこにいく!」


「向こうの考えはわからないけど、今のうちに休憩しょうと思って…」

ティアナはグレイの声にこたえると、洞窟に流れる地下水脈に近付いていった。