通路を歩くサラの前に、ギナムが現れた。

「サラ様。何かございましたか?蜂達が騒いでおります」

「フン」

サラは鼻を鳴らすと、ギナムの横を通り過ぎ、

「大したことではない」

一言だけ言うと、通路の奥に消えた。

「…」

ギナムは振り返り、遠ざかっていくサラの背中に目を細めた。

「ギナム様!」

烏天狗が、サラが来た方向から駆け寄ってきた。

「人間がこちらに向かって来ております」

「人間?」

烏天狗の報告に、ギナムは眉を寄せ、

「どうやって、ここを嗅ぎ付けたのだ…?まあいい…」

その後、口許を緩めた。

「魔法が使えぬ人間など、恐れることない。で、何人だ?軍隊でも、連れて来たか?」

少し嘲るように言ったギナムの目の前で、烏天狗の体が震え出した。

「どうした?それほどの大軍で攻めて来たのか?」

訝しげに自分を見るギナムに対して、何とか平常を保とうとしていたが、向けた目に怯えの色が隠せない。

「に、人間の数は、4人です」

「4人!?」

「は!」

烏天狗は跪き、

「その4人に、我らの軍勢は、ほぼ壊滅!鎮圧に向かったギラ様も敗退!」

「誰が敗退だ?」

「ぎゃああ!」

烏天狗の後ろに現れたギラは、雷撃を放ち、烏天狗を消滅させた。

「まともに報告もできぬ者は、我が騎士団にはいらぬ」

「ギ、ギラ様!?」

ギナムは絶句した。

顔が焼け焦げ、頭蓋骨の一部を剥き出しになったギラが、目の前に現れたからだ。

「ギナムよ」

「は!」

ギナムは思わず、跪いた。

「心配はするな。今から、やつらを!我が皆殺しにする!」

ギラは、ギナム見下ろし、

「砦にいるすべての兵に伝えよ!邪魔をするなとな」

「は!」

ギナムは深々と、頭を下げた。

ギラからの凄まじいプレッシャーに、押し潰されそうになっていた。

(やはり…我が空の騎士団長は、違う!)

同じ魔神であるが、天と地ほどの違いがあった。