地盤沈下により、地下へと落ちたティアナを探したが…見つけることができなかったギラは、来た時とは真逆で…これ以上はない程の遅さで、砦へと戻った。

飛び出す時破壊した壁から、砦内に入ると、腕を組んだサラが待っていた。

「フン」

サラはギラに冷たい視線を浴びせると、一度鼻を鳴らし、ギラの前から立ち去った。

「クッ」

ギラは、サラの後を追うことはしなかった。

ただ…降り立った通路の上で、己自身の不甲斐なさを恥じた。

騎士団長である自分が、人間の女と互角の戦いをした。

その意味は、負けるよりも重かった。

ギラは無言で、怒りで震える拳を目の前に持ってきた。そして、ゆっくりと拳を開くと、手のひらをスパークさせた。

「ギラ…ブレイク!」

己の顔面に、手のひらを押し付けた。

雷撃が直接、顔を焼いた。

肉の焼ける匂いと、眼球が沸騰した。

ギラは、手のひらを顔面から離した。

表面の肉が消滅し、頭蓋骨が露になっても、ギラは己を許さなかった。

「まだ足りぬわ!」

ギラの咆哮と、雷鳴の輝きが砦の空いた壁より、外に向かって轟いた。

その音を聞いて、砦の周りにいた魔物達は…身を震わせていた。