「き、騎士団長…ギラ」

クラークの言葉に、ギラはフッと口許を緩めた。

土から煙が上がり、辺りの熱気は一気に上がった。

「は!」

その煙を切り裂いて、いつのまにか接近していたジャスティンの身をよじったローリングソバットが、ギラのこめかみを狙った。

「我の姿を見て、畏れることなく…すぐに攻撃してきたのは、貴様が初めてだ」

ギラは左手を突きだすと、ジャスティンの蹴りを受け止めた。

「いや…貴様らか」

3メートルはあるギラの巨体の懐に、クラークが飛び込んできていた。

「貰った!」

クラークは、ジャスティンの蹴りを受け止めた左腕の下を通り過ぎた。その時、腰につけていた長剣で左腕が落とす影を切り裂いたのだ。

付け根近くから、切断された左腕。

鮮血が舞う中、ジャスティンは地面に着地しょうとした瞬間、

「甘いな」

ギラは笑った。

「チッ」

危険を察知し、ジャスティンは爪先だけつけると後方にジャンプした。

ギラの全身から、電気が放電された。

「ぎゃああ!」

逃げるジャスティンに、電気が網のように絡まった。

ギラの後ろにいたクラークは振り向き、再び影を切ろうと前に出た時だった為、至近距離で雷撃をくらってしまった。

「なかなかよかったぞ」

ギラは右手で、切り取られた左腕を地面に落ちる前にキャッチすると、そのまま肩口に押し付けた。

すると、腕は元通りになり…普通に動かせるようになった。

ジャスティンが蹴りを放ち、ギラがくっ付いた腕の感触を確かめるまでの時間は、数秒。

「ほお〜」

横目で、感電して白目を剥いているジャスティンを確認した後、足下で気を失っているクラークを見下ろし、感心したように頷いた後、首を傾げた。

「炭にしたつもりだったが…。おかしいな。魔法でも使ったか?」

自分でそう言った後、首を横に振った。

「それは…あり得んな」

そして、ゆっくりと顔を前に向けた。

「貴様らガキに、構っている暇はない」

その視線は、ティアナを射ぬいた。

「見つけたぞ…。人間の女」