「いかがですかな?」

紫の翼と鷹のような顔を持つ…魔神ギナムは、巨大な繭の前で、自慢気に胸を張った。

「フン」

視察に来ていたサラは、鼻を鳴らした。

「う〜ん」

その隣で、ギラは首を捻った。

人間と憎しみを培養して造られている女神は、資格者の選定を終えていた。

周りにある繭から管が通され、ギナムの後ろにある繭にすべての液体が流れ込んでいた。 その為、周囲の繭は段々と小さくなっている。

「あと数日で、新しい女神が誕生します!我ら空の騎士団を率いる空の女神が!」

少し興奮気味に言うギナムとは対象的に、2人の騎士団長は冷めていた。

繭のある部屋を出ると、腸の中を歩いているような通路を並んで歩いた。

巨大な蜂の巣のような外観を持つ…魔王軍の砦。

内部も複雑になっており、蜂に似た魔物が歩き回っていた。

「…どうも好かんな」

ギラは、蜂に似た魔物を見ながら、顔をしかめた。

「こいつらもそうだが…。人間の姿をした女神というのは…」

ギラの言葉に、無表情のままでサラがこたえた。

「我々も人に似てるだろうが…」

少し殺気のこもったサラの口調に、ギラは慌て、

「な、何を言うか!我々には、人間にはない!素晴らしい角があるではないか!」

「フン」

サラは、歩きスペースを速めた。

「サ、サラ!」

ギラもスピードを上げた。

「下らんな」

サラは虚空を睨み、

「人間が、我々に似てるのではない。人間は神に似せてつくられた…いわば、神の姿をした偽者。そして、我々は…神に創られた。お側で、お伝えする為に…」

「そ、そうだな」

ギラは頷いた。

「人間をどんなにいじったところで、神になれん。あれは、単なる歪んだ生き物だ。神の力だけを与えられたな」

サラはそう言うと、軽く唇を噛み締めた。

「そ、それはわかっているが…王のご命令は、絶対だ!あの女神が目覚めたら、我々は仕えなければならない」

「わかっておる!」

サラの怒気が、通路の壁を震わした。

通路にいた蜂に似た魔物達は、サラの気を感じ、パニックになった。