「…で、そこはどこにあるんですか?」

一晩明けた早朝のジャングルを歩く…4人。

魔物の気配は感じられたが、恐怖は感じなかった。

ジャスティンは左右に気を配りながらも、余裕を装って、一番前を歩くグレンに訊いた。

「ああ…」

前を進みながら、考え事をしていたグレンは…すぐには、こたえられなかった。

数秒間をあけてから、

「ジャングルを抜けたら、北上する」

「北上?」

ジャスティンは眉を寄せた。 なぜならば、その方向は、魔界へ近付くからだ。

でもその前に、世界を寸断する結界がある。

結界近くは、魔界と隣接している為に、あまり人が寄り付くことはなかった。

なぜならば、強力な魔物と出会うかもしれないからだ。

確かに、結界は…ほとんどの魔物をこちら側に来させないようにしているが、魔神など神レベルの魔物はすり抜けることができた。

結界の意味がないと思われるだろうが、通すことにも意味があると、今は理解されていた。

魔神が通れないほど、強固にした場合…必ず、やつらは力ずくでも突破しょうとする。そうなれば、いずれ…結界は破壊される。その結果、すべての魔物がこちら側に雪崩れ込むことになる。

それを防いでいるだと。

突破できる魔神達は、少ない。あとは、人間達で何とかしろ。そのような意味があると、今は言われていたが…真実は誰も知らない。


「結界近くか…」

ユーラシア大陸の半分近くを寸断する結界である。魔神が突破する時に出くわす確率は、低い。

ジャスティンは身震いした。

強い魔物に会うことは、願ったり叶ったりだった。強くなる為には、ぎりぎりの戦いをしなくてはいけなかった。

ジャスティンは拳を握り締めると、グレンの後ろを歩くティアナに訊いた。

「先輩…。どうして、ジュリアンさんに会わなかったんですか?」

「?」

ティアナは振り返った。

目が合いそうになって、慌てて顔を反らし、

「ひ、久しぶりに、ジュリアンさんと組手をしたかったのに…なあ…」

ジュリアン・アートウッド。ティアナの妹であり、ジャスティンの二つ上だった。