「お母様!」

浩也は咄嗟に、フレアの上に覆い被さった。

「浩也!」

「何!?」

浩也の背中に、十字の傷が走り、鮮血とともに…背中の肉が燃え出した。

「うわあ!」

痛みから背中を反らしたが、 浩也はフレアから離れることはない。


「どうやら…先程の状態は、無意識のようね」

炎が立ちのぼっている浩也の背中を見つめ、リンネは呟いた。

魔神ムゲ達を倒した時の浩也は、明らかに炎の属性だった。

それに、レベルは魔神を超えていた。

例え、リンネの炎であろうと、こんな簡単に燃え上がることはないはずだ。

「お前は、あとで相手してあげる」

リンネは2人に近付くと、浩也を蹴り離そうとした。

ゆっくりと蹴りの体勢に入ったリンネの足を、フレアのか細い腕が止めた。

「フレア!」

浩也の体の下から抜け出したフレアは、右腕でリンネの足を押さえながら、左手は浩也の背中にかざし、炎を吸収した。

浩也の炎が消えると同時に、フレアは力を込め、リンネの足を押し戻した。

「あ、あたしの炎を吸収した!」

リンネとフレアは元々、同じ魔神であった。それを、魔王ライが2人にわけたのだ。

例え、レベルが違おうと、もとは同じ炎。フレアの体を回復させることができた。

思わずよろけたリンネは、何とか踏み止まると、

「例え!お前とあたしが、同じ炎だとしても」

全体を炎そのものと化した。

「吸収すればいいこと!お前の自我を焼ききり!あたしの一部にしてやるわ!」

「お姉様…」

フレアは、両手を広げ、

「あたしは、あなたと一緒になることはありません。あたしの体は、いつも…あの人とともに…」

リンネに微笑みかけた。

「フ、フレア!」

リンネの顔が、怒りの形相に変わる。

「お姉様」

「どこまでも、馬鹿な子…。お前がそこまで思う男は!お前以外の女を愛しているというのに!」

リンネは攻撃対象を、フレアから浩也に突然変えた。

「坊や!」

リンネの炎が、浩也に向かって放たれた。