ゲイルの遺体の前に立ち尽くすティアナに、声をかけれずにいるジャスティン達。

「仕方ありませんね」

管制室に入り、核ミサイルの到達予定地点を導きだしたランは、口笛を吹いた。

「ふゅ〜。撃たれていたら、人間は住む土地を失いましたよ」

キーボードを叩きながら、ランはその事実よりも驚いたことがあった。

(誰が…プログラムを書きかえた?)

まだ知識に乏しい十字軍の科学者には、できない芸当だった。

(魔物の中に…科学に詳しいやつがいるのか?)

と思うと、ランは戦慄した。

そして、次の瞬間、躊躇うことなく…プログラムを破壊した。

(これで…撃てないだろ)

キーボードから手を離すと、割れた窓から格納庫に聳え立つ核ミサイル達を見つめ、

(あとは、これの始末か…)

顎に手を当てて思案していると突然、管制室の扉が開いた。

「失礼しますよ」

この言葉は、同時に…格納庫内でもこだました。

「?」

ジャスティンの背中を見つめていたクラークが、振り返った。

白い装束に身を包まれた集団が、ぞくぞくと入ってきたのだ。 そして、クラークのそばで止まった。

その集団の先頭に立つ五人は、白いフードを目深に被っていた。

その集団を見た瞬間、クラークは目を見開き、後ろへと下がった。

「ティアナ・アートウッド殿は、どちらにいらっしゃるかな?」

白い髭を蓄えた男が、集団の中から一歩前に出た。

フードが邪魔して、鼻から上の表情は、わからない。

ジャスティンは、道を開けることなく…その不気味な集団から、ティアナを守るように間に立った。

「あたしですが…」

そんなジャスティンの肩を後ろから、ポンと叩くと、ティアナは前に出た。

「何か…御用で?」

ティアナは、白髭の男に微笑みかけながらも、目は鋭く後ろの集団を観察していた。

落ち着いた佇まいは、彼らがただ者ではないことを物語っていた。

それに、目の前に立つ白髭の男の雰囲気が、どこか…ゲイルに似ているように感じた。

(何者だ?)

探る目が、集団の横で控えるクラークの姿を映した。