両手から、気が放たれる…はずだった。

「何!?」

ゲイルは絶句した。

体がくの字に曲がり、胸から背中まで…ライニングソードが貫いていた。

「き、貴様…」

ゲイルは両手を開いたまま、気を放たずに固まった。ティアナを睨もうとした時には、もうそばまで移動していた。

投げつけたライニングソードは、ゲイルの心臓を貫いていた。

「うわあああっ!お祖父様!」

ライニングソードは貫いたまま分離すると、再びティアナの手に戻った。

と同時に、直ぐ様…ゲイルの両腕を切り裂いた。

「ぎゃああ!」

痛みで悲鳴を上げるゲイルの表情が再び歪み、

「そ、そうだ…。それでいい」

微笑んだ。すぐに、苦悶の表情に戻り、

「ば、馬鹿な!?肉親を斬るだと!?」

ゲイルは血走った眼で、ティアナを見つめた。

すると、ゲイルの体から…黒い霧のような物体が染みだしてきた。

煙のように、上空に逃げようとする黒い霧を、ティアナはライニングソードで横凪ぎに切り裂いた。

「うぎゃあああ!」

断末魔のような声を上げて、霧はかき消された。

同じタイミングで、本部内の通路でも、断末魔は響いていた。

「よ、よくやった」

ゲイルは両腕と胸から、鮮血を噴き出しながら、絶命した。

「お祖父様!」

ティアナが駆け寄り、抱き上げた時には…もう息をしていなかった。

ティアナの腕の中で、涙を流しながらも、安心したように微笑んでいるのが…少しは救いになった。

「お祖父様…」

ティアナは涙を堪えた。

なぜならば、まだ泣いてる場合ではないからだ。

ゲイルの遺体を、床に置くと、ティアナはライニングソードを握り締めた。

「うおおおっ!」

狼のような咆哮を上げると、鬼神と化したティアナが、残りの魔物に襲いかかった。