「轟雷蔵?高等科三年って…」

ジャスティンは、炎から核ミサイルを守った轟を見て、

「学生かよ…」

小声でぼそっと呟いた。

角刈りの轟はどう見ても、十代には見えない。

ティアナと変わらない年齢とは、信じられなかった。

「フン!」

轟は、息継ぎの為に炎を放つのを魔物がやめると同時に、槍を投げつけた。

蜥蜴に似た魔物の喉に突き刺さる。

「…死ね」

クラークが長剣で影を切ると、周囲にいた魔物が細切れになった。

「ふゅ〜」

それを見て、ランが口笛を吹き、

「すごいね」

感嘆した。

「…」

クラークは無視して、ただ黙々と魔物を駆逐していく。

ランは肩をすくめ、少し戯けて見せた。だけど、心の中では、冷静に分析していた。

(今の特殊能力…純粋な人間の能力に思えない)

観察対象にしたいが、そんな暇はなかった。襲い来る魔物の相手をしなければならない。

「他の隊員は、何してるんだ?」

鞭を振るいながら、騒動が起きている格納庫に誰も来ないことをおかしく感じていた。


その頃、本部内は…目に見えない敵に蹂躙されていた。

「や、闇に…吸い込まれる」

通路の出た…黒い闇の塊は渦を巻き、あらゆるものを吸い込んでいた。

その吸引力は、廊下を照らす蛍光灯の光すらも吸い込んでいった。

本部内は、光をつけても…明るくならない…闇と化していた。

「フフフ…」

ブラックホールのようになった闇の塊が、笑った。まるで、人間のように…。渦の底で、にやりと笑いながら。

「フフフ…」

その渦と同じ笑いをもらす者がいた。

ティアナの目の前に…。

「お祖父様!」

ティアナは、ジャスティン達が戦う中…ゲイルの前から動けなくなっていた。

その理由は、簡単である。

周りにいる誰よりも、凄まじい魔力を感じられたからだ。

ティアナがいなくなった瞬間、核ミサイルは破壊される。

ティアナの本能がそう…告げていた。

「ティアナよ…」

冷や汗を流しているティアナに、グレンは言った。

「祖父を殺すのか?」