「フン!そう…。わかったわ」

ブルードラゴンが一撃でやられたのを見ていたリンネは、鼻を鳴らした。

腕を組み、ファイやムゲがいた山よりも離れた山頂で、すべてを見ていたリンネは、すべてを悟った。

「アルテミア…あなたが、やろうとしていること……フフフ……ハハハハハハ!」

リンネは、笑いが止まらなくなった。

「あの力任せの小娘が、よく思い付いたこと」

リンネは、山頂から助走もつけずに飛び上がった。

「そして!」

リンネは、浩也が下りて行った付近を睨んだ。

「フレア!」

リンネの感情を表すように、全身が燃え上がった。

「どこまで、愚かなの!」

流星と化したリンネは瞬きの時間より速く、森の中に着地した。

その全身を覆う炎は一瞬で、森のすべてを焼き尽くすかと思われたが…なぜだろうか。

目の前にいるフレアを見た時、リンネの炎は消えた。

鎮火した訳ではない。

憎しみを越えて、憐れみさえ覚えていた妹の前に、立ちはだかる浩也を見た時、リンネの炎は消えた。

まるで、母親を守る…本当の息子のように見えた。

そして、そこには…傷つきながらも、確かな幸せがあった。

愚かと罵りたかった相手は、自分が到底手に入れることのできないものを得ていたのだ。


「な、何…」

リンネの肩が震えた。


「お母様!」

ダメージを受けて動けないフレアを庇うように、浩也は両手を広げた。

「浩也…」

フレアは何とか立ち上がろうとするが、ブルードラゴンが放った特殊な水が、彼女の力の素である炎を抑えており、力が入らない。


「お母様?」

浩也の言葉で、リンネの震えは全身に広がった。

「炎の魔物である…お前がお母様だと!」

リンネの体が、再び燃え上がった。

「そんな茶番を!」

リンネの両腕から、炎が噴き出すと、刃の形を取る。

「死んでもなお!どこまでも!見苦しい女なことよ!」

フレアに向かって、伸びた刃が鞭のようにしなった。

「フレア!」

リンネは絶叫した。