「お祖父様がお会いになって頂けないと…」

兵士の返事を聞いたティアナは、大人しく頭を下げるとその場から離れた。

「先輩」

ティアナの後ろを、ジャスティンとクラークが続く。

つい先程も断られていたが、結界が消えた為に、どさくさに紛れて本部内に入ったのだ。

しかし、重要機密がある奥へは、入ることができなかった。

当面の恐怖が去った本部内は、規律を取り戻しつつあり、簡単に忍び込むのは不可能になりつつあった。

実力行使で進むことはできたが、争いは避けたかった。

「やはり…駄目だったようだね」

兵士達の進む方向と逆に歩くティアナの前に、廊下の壁にもたれるランが声をかけた。

「魔神を追い払った勇者を邪険に扱うとは…よっぽど、嫌われているんですかね」

ランは、ティアナに笑いかけた。

「ランマク…」

「それとも…邪魔されたくないのか」

ランマクは顎で、ついてくるように促した。

「乗り掛かった船です」

ティアナ達は頷くと、ランの後ろを歩き出した。

人通りの多い通路を避けるように、歩き続けるランは、周りに兵士の影がなくなると、口を開いた。

「別に、人混みを避けている訳ではないですよ。私達の研究が、あまり…需要がないだけですよ」

ランはカードを、ティアナ達に見せると、

「今まではね」

フツと笑った。

灰色の何一つ変わりのない通路を数分歩いていると突然、扉らしき模様が現れた。

「ここです」

ランは扉を押して、中に入ろうした。

「うん?」

ランだけでない。

ティアナ達も動きを止めた。

微かな隙間から、妖気が流れてきていたのだ。

「ま、まさかね」

ランは肩をすくめた後、真剣な表情になった。

ティアナは頷いた。

ランも頷くと、笑顔をつくり、

「誰も…いないはずですけど…一応、ただいま」

ドアを押した。

次の瞬間、部屋の中から鋭い爪が飛び出して来た。

「馬鹿な!」

ランは横っ飛びで、その攻撃を避けた。

反対側の壁に、爪が突き刺さった。

「本部内に、魔物がいるだと!?」

ランは絶句した。