「く、くそ!」

カレンは焼け焦げた魔物の死骸が転がる中、地面に倒れていた。

全身が痺れていた。

突然、晴天の空から落ちてきた雷鳴は、すべての魔物を貫いた。

カレンは、咄嗟に投げたピュアハートが避雷針となり、 直撃は免れていた。

しかし、帯電した電流が地面を這い、離れた位置にいたカレンの足から頭までを痺れさせた。

それに、ただの電流ではなかった。

体の気の流れさえも狂わし、カレンは立ち上がることができなかった。

「何だ…攻撃は」

木々に囲まれ、太陽の光があまり届かない地面は少し湿っていた。

その泥のような土を指先でかきむしり、立ち上がろうとするが、無駄な足掻きだった。


「相変わらず、よく倒れているね」

何とか目だけを動かせるカレンの視線の端に、 黒いブーツの先が映った。

いや、正確には黒いブーツではない。

全身を黒い結界で覆っていたのだ。

勿論、カレンには上まで見ることはできない。


「でも…仕方ないかな?今のは、魔王の雷撃と同じ性質のもの。すばやく結界を張らないと、少しでも感電すれば、動けなくなる」

「あ、あんたは…」

カレンは耳に入ってくる声だけで、そばに立つ人物を特定できた。

「ジャスティン・ゲイか…」

「ご名答」

ジャスティンは、身を包んでいた結界を解いた。

そして、地面に倒れているカレンに笑いかけた。

「そうか…。君にはまだ教えてなかったね。digシステムの発動プログラムを」

ジャスティンは自分のプロトタイプブラックカードを見つめた。

「直接的な魔王の攻撃には、無意味だったけど…大抵の攻撃は防ぐことができるから」

プロトタイプブラックカードの一部が、赤く点滅し、危険を告げていた。

「一体…何が起こっているだ?」

カレンは、顔だけでも上げようともがく。

そんなカレンよりも、ジャスティンはカードが告げる危険人物がいる方向に、目を向けた。

「人類の希望になるのか…絶望になるのか…。2人の姉妹が久々に顔を合わしているのさ」

ジャスティンは、目をゆっくりと細めた。