「プログラムの書き換えは、終了している」

空が見える格納庫内で、ゲイルの前に並ぶ…兵士達。

「我々は、魔法を奪われた!しかし、そんなことで、我々が何もできなくなり…無抵抗に、やられるだけとは思わないことだ!」

ゲイルは、彼らに向かって叫んでいた。

「今こそ!やつらに天罰を!」

兵士達は黙って話を訊いているが、その身は怒りで震えていた。

「十分後に、すべてのミサイルを発射させる!」

ゲイルの横に立つ司令官が、命じた。

「全員、配置につけ!」

「は!」

敬礼し、持ち場へと走り去る兵士達。

その機敏さに、満足げに頷いた司令官は、ゲイルの方を向いた。

「人類の輝かしい未来が、開く。人類が、この世界の名主になるのだ!科学という力でな!ハハハハ!」

高笑いをしながら、司令官は格納庫から出ていた。

その様子を無言で見つめながら、ゲイルは心の中でほくそ笑っていた。

(まるで〜蟻だな)

規則正しく歩き回る兵士を見て、そう思った。

(お前達は…この世界の名主にはなれん。数分後、この星を汚した罪を犯し、その罰を受けるのだ)

微かに唇を震わせ、

(滅びという罰を)

沸き上がる笑みをおさえていた。



「ゲイル様」

そんなゲイルのそばに、若い兵士が駆け寄ってきた。

「どうしました」

ゲイルは無表情で、横に来た兵士に訊いた。

「は!」

兵士は敬礼した後、

「お孫さんであられる…ティアナ・アートウッド様がお会いしたいと申しております」

「何?」

ゲイルは顔をしかめ、

「その件は、追い返すように命じたはずですが」

「え…し、しかし…」

兵士は驚き、戸惑いの顔を見せた。

本部にいる兵士の殆どが、ティアナの行動を知っていた。

そのティアナを邪険に扱うゲイルに、驚いたのだ。

「追い返して下さい」

ゲイルはそれだけ言うと、兵士から離れた。

(あの女…)

ゲイルは、前を睨んだ。

(何しに来た)

天に向かって聳え立つ核ミサイルを見上げ、

(邪魔させる訳にはいかない)

拳を握り締めた。