「どう言う意味です?」

今度は逆に、ランがティアナに訊いた。

「簡単なことよ。あたしには、さっきの攻撃が間違いとは思えない」

「狙って撃ったと?」

「ああ…」

ティアナは頷いた。

「どうして?同じ人間を殺しただけだぞ?」

ランはティアナの方に、体を向けた。

「データを取る為…いや、それがメインじゃない。もしかしたら…」

そこで、ティアナは言葉を切った。そして、唇を噛み締めると、再び歩き出した。

「アートウッド!」

ランは、言葉の続きをきき出そうとした。

「真実を確かめてくる」

ティアナは後ろ手で、プロトタイプであるブラックカードをランに示し、

「カードをありがとう」

改めて礼を述べた。

「先輩!」

慌てて、ジャスティンが後ろを追った。ランの横を通り過ぎる時、頭を下げて。

「やれやれ〜」

ランはため息をついた。

「あんな性格でなければ…今頃…」

と言いかけて、前にいるクラークに気付いた。

「君は…行かないのかい?」

ランの言葉に、クラークは少し驚いてから、歩き出した。

「行きますよ。あそこを守らないといけないですし…」

少し…仕方がないというような感じで歩き出したクラークに、ランは目を細めた。

クラークからは、ティアナとはまったく違う感覚を感じ取っていた。

「君は…」

何か言おうとしたランを、クラークは言葉で止めた。

「人類の為です」

その揺るぎない口調に、ランは何も言えなくなった。

彼は…ティアナとは違うベクトルで、人間の為に動いている。それだけは、確かであると思った。

(しかし…)

自分の横を通り過ぎ、ティアナの後を追う少年の後ろ姿に落ちる陰を感じ、ランは目を細めた。

(あの歳で、何を背負っているのか…)

ティアナの横を無邪気に歩く少年にも、強き意志は感じた。人々を守るというよりは…ティアナを守るという思い。それは、純粋で揺るぎない。

そんな2人の少年が、親友でいる。

(もしかしたら…)

だからこそ…惹かれ合うのかもしれない。

ランはそう…思った。