そして、ムゲが消滅した後、男はライトニングソードを天に向けた。

すると、晴天の青空なのに、雷鳴が轟いた。


「うぎゃああ!」

まだ残っていた数百匹の魔物のすべてが、悲鳴を上げた。

差別することなく、すべて魔物に雷が落ちたのだ。


そして、数秒後…魔物の群れは全滅した。

男の手にあるライトニングソードは、2つに分離し…チェンジ・ザ・ハートに戻ると、どこかに消えていった。

男はゆっくりと、地上に向けて降りていった。

地面につく前に、身を包んでいた炎は消えていた。

爪先が、地面についた瞬間、男は目を見開いた。

「え!」

一瞬…状況が理解できない。

(確か…僕は…)

頭を押さえ、記憶を探る。

そして、思い出した。

「お母様!」

炎に包まれて、魔神達を倒したのは…浩也だった。

「お母様!」

浩也は、魔物の死骸が所々に転がる森の中を駆け出した。

どうして、魔物達が死んでいるかは、わからない。

だけど、そんなことを考えている暇はない。

今は、ドラゴンにやられて、傷付いたフレアのことが気にかかった。

「お母様!」

森の中で、そばに生えていた木にもたれて、フレアは浩也の自分を呼ぶ声を聞いていた。

木々の隙間からこぼれる木漏れ日の中から、姿を見せた浩也に、フレアは自然と微笑んだ。

その姿は、ブルードラゴンと2人の魔神の力を吸収したことにより、さらに成長していた。

(もう…すぐ終わる)

フレアの目から、一筋の涙が流れた。

それは…とても嬉しいことのなのに、とても悲しいことに思えた。


「お母様!」

自分に駆け寄る浩也を見つめていたフレアの目に、驚愕の色が浮かんだ。


魔物達との戦いで、地面に落ちた枝を踏み折る音がした。

折れた枝は、すぐに燃え上がった。

その炎に優しさは、ない。

「憐れな妹に、せめて…永遠の安らぎを」


「あああ…」

浩也の後ろから現れた人物に、フレアは絶句した。

浩也とフレア…血の繋がりのない親子に、最後の時が突然訪れた。