「!」

不動は、話しかけられると思っていなかったようで、少し驚いた後、指で真上を示した。

「わかった」

ラルは頷くと、部屋から出た。

無言で回廊を歩くラル。彼の王に対する忠誠心は、揺らぐことはない。 彼もまた、ライから生まれた1人だからだ。

それ故に、王に歯向かうもの…王の心を惑わすものには、容赦がない。




「…」

アスカの様子を見つめていたライは、玉座から立ち上がると、そのまま…部屋から消えた。

鳥の囀ずりに夢中であるアスカは、ライがいなくなったことにまったく気付かなかった。

ただ外の世界で、自由に歌うことのできる鳥の声に憧れていた。


そんな微かな鳥の囀ずりを気にするものが、もう1人いた。

アスカの真下に。


「何だ?あいつは」

ラルがいなくなったので、カエル男は慌てて部屋を出た。その後ろ姿を睨みつけるリンネに、不動は肩をすくめて見せた。

「あたしの妹に対しての言葉!絶対許さない!」

まだ怒りがおさまらないリンネは、隣にいるはずのフレアがいないことに気付いた。慌てて部屋を見回すと、奥にある窓のそばに立つフレアを確認した。

「どうしたの?」

リンネは無表情でありながら も、フレアの目の色がいつもと違うことに気付いた。体をわけた姉妹だから、わかる微かな変化だった。

フレアは、窓の外から聞こえる鳥の囀ずりに耳をすましていたのだ。

「?」

リンネは首を捻った。妹の変化はわかっても、彼女が何を感じているのかはわからなかった。

しかし、微かに微笑んだ妹の表情を、悪くないとリンネは思った。

「やれやれ…」

不動はまた肩をすくめると、部屋から出ていた。

騎士団長には、自由を認められていた。ライの命令があるまで、どこにいようと好きにしていいが、ティアナにつけた傷がまだ、完治していなかった。

自分を創ったライの魔力で満ち溢れている城にいるだけで、傷は癒えていく。

「しばらく…ゆっくりするか」

不動は、城をぶらつくことに決めた。