「うん?」

海を渡りきったティアナ達は、ホバーバイクを沿岸警備隊に返すと一路、十字軍本部を目指した。

上空では、洋々な式神が飛び回り、核爆弾後の状況を本部に伝えていた。

ティアナはブラックカードを取り出すと、耳に当てた。式神の情報を傍受する為だ。

あまりにも飛び交っている式神が多い為、電波は混乱していたが、伝えていることはほぼ一つだった。

「被害は、爆心地から広がっていないようね。だけど…そばにいた人々は、誰も助かっていないわ」

そう言って、ブラックカードを耳から離したティアナは、溜め息をつき、近付いてくる十字軍本部を睨んだ。

「爆心地に、救助隊は出ていないんですか?」

ティアナの隣を歩くジャスティンが訊いた。

「そうみたい…。騎士団長2人に、魔神を多数確認した為、出撃は見合せたようね」

「腰抜けが!自分達が巻いた種だろうが!」

ジャスティンが毒づくと、後ろにいたクラークが口を開いた。

「放射能が残る場所に、何の防ぐ方法も知らない人間が行ったところで、被爆するだけだ!逆に、被害者が増える」

「だとしても、助けにいくのが、十字軍の仕事だろうが!」

ジャスティンは足を止めると振り返り、クラークに食ってかかった。

「お前は、兵士に死ねといいのか!」

胸ぐらを掴んだジャスティンの腕を、クラークは握り締めた。

「何の後始末もできない兵器ならば!持つんじゃないよ!」

ジャスティンは、クラークを締め上げた。

「クッ!」

クラークは顔をしかめ、

「へ、兵器に、後始末なんて考えてるものがあるか!」

ジャスティンの腕を思い切り、握り締めた。

「そんな人間の考えが!世界を汚すんだ!」

クラークの握力でも、鍛えられたジャスティンの腕はびくともしない。

「気を使っていたら、人間は滅んでいた!」

クラークの絶叫に、ジャスティンもキレた。

「だったら!」
「もういいわ」

ティアナが、2人の間に割って入った。

「どちらも正論。但し…一方は、人間の立場にしか立っていないけども」