「馬鹿な!あり得ん!」

ファイは、フレアが落ちた辺りから立ち上った火花が刃と化し、ブルードラゴンを切り裂いたことに絶句した。

「今のは、正しく…ネーナ様の斬撃!?女神の技を使えるのか!!」

無残にも、肉片となり…地上に落ちていくブルードラゴンは、その巨体故に…肉片でも落ちるだけで、大惨事となった。

四国くらいの広さがある森林の一部が、穴が空いたように緑が吹き飛んだ。

だが、不思議と…ブルードラゴンの死骸は燃えているのに、森に炎が燃え移ることはなかった。

「炎の種類が、違うのか!?」

炎の属性である魔神ファイは、ブルードラゴンを燃やす炎に目を奪われてしまった。

森の中や、空にいた魔物達がパニックになっている中…1人冷静に、戦況を見ていたムゲは、突然空に出現した太陽に見つめ、動けなくなっていた。

「な、なんという…魔力…」

思わず呟いたムゲの言葉にはっとして、ファイは視線を空に向けた。

「あ、ああ…」

空に浮かぶ二つ目の太陽に気付いた時…ファイの頭に、ある映像が甦った。


玉座に座るライに、向けて剣を突き出す…人間の男。

その指には、光輝く指輪がはめてあった。

「モード・チェンジ!」

人間の男は叫んだ。




「あ、あ、あ、あ」

ファイの目に、空中に浮かぶ太陽の中にいる人間に似た者が、ゆっくりと顔を向ける動きがスローモーションで映る。

「あ、あ、あ…ああ!!」

目があった瞬間、ファイは絶叫した。

「あ、赤の王!」

その言葉が、ファイの最後の言葉になった。

太陽から伸びてきた三本の爪が、ファイの体を貫いた。

そして、次の瞬間…ファイの体は消滅した。



「な…なんだ!!」

ファイがやられた一瞬の間に、ムゲは全身を包んでいた翼を広げ、今いた場所から高速で退避していた。

その行動は、無意識であった。

でないと、ムゲも一瞬でやられていたであろう。

「あ、赤の王だと!?」

辺境の地に飛ばされていたムゲは、彼の顔を知らない。

「な、なぜ!ここにいる!?」

空中に浮かぶ太陽は、ムゲに視線を向けた。