カイオウの言葉に、ゲイルは口許を緩め、

「王には感謝している。迅速な対応で、自然を破壊するのを最小限に抑えることができたことを」

深々と頭を下げた。

「き、貴様」

カイオウの眉が跳ね上がった。

「そう…怒るな」

ゲイルは口調を変えた。

「今日の出来事で、人は…さらに自滅の道を歩むことになる」

「どういう意味だ?」

「カイオウよ。私は、ライ様の側近として…誰よりも、王のお心を知っておる。だからこそ…だ。今回の核の使用により、人はその力を知った。しかし、やつらには扱えんよ。それに、王の力を持ってすれば…核を今すぐにでも、爆破できる」

ゲイルの唇が左右に裂ける。

「人間が存在する限り…王のお心は落ち着かない。だからこそ…人間には、早めに滅びて貰わないと困るのだ」

「そう簡単に…いくかな?」

カイオウの体が、段々と薄くなっていった。

「それが、驚く程にな」

その後…ゲイルはカイオウに何かを告げた。



「ゲイル様」

楽しそうに満面の笑顔を浮かべたゲイルの真後ろにある扉を、誰かがノックした。

裂けていた唇が元に戻ると、ゲイルの顔から笑みが消えた。

と、同時に…カイオウの姿も、空間に溶けるように消えた。

「はい。どうぞ」

振り返らずに、答えたゲイルの声に反応して、扉が開いた。

「ホワイト中将がお呼びです」

「わかりました。今すぐ、行きます」

「了解致しました」

部屋に入ることなく、開けた扉の隙間の向こうで、頭を下げると、兵士は扉をゆっくりと閉めた。

完全に閉まったことを音で確認すると、ゲイルは振り返った。

無表情をつくると、閉まった扉を数秒見つめた後、おもむろに扉に近づいた。

ノブに手を伸ばし、扉を開けると、まだ慌ただしい廊下を…今度は、人波にそって歩き出した。

人を自滅の道に、導く為に。