カレンはふうと息を吐くと、

「さあ…どうする?」

自分に問いかけた。

空中のドラゴンに斬りかかるか…向こうの大群に向かうか。

ドラゴンの意識は、こちらにない。

確実に先手をうてる。


しかし…戦うにしても、時間がかかる。

向こうの大群に向かって、やつらの目的のものを見つけるのも、時間はかかる。

「クソ!」

戸惑いが、カレンの足を止めた。

その時、風が切り裂かれた。

いや、風だけじゃない。

空気が、空間が…裂けたのだ。



「え」

それは、一瞬だった。

空を飛び回る魔物の群れに向かって、下から赤い炎の柱が三本立ったと思ったら…その柱が倒れるようにしなった。

次の瞬間、カレンの頭上にいたドラゴンの体に三本の亀裂が走り、燃え上がった。

ドラゴンは断末魔の悲鳴を上げることなく、三つの肉片に変わった。

「何!?」

カレンは、燃えながら空から落ちてくる巨大な肉片に目を見開いた。


「く、くそ!」

プロトタイプブラックカードを発動させ、カレンは慌ててテレポートした。

一瞬で、一キロ程テレポートしたが、それによりポイントは零になった。

それでも、ドラゴンの肉片をよけれたのは、ぎりぎりだった。

周囲の木々を薙ぎ倒し、落ちた衝撃で突風が発生し、カレンをふっ飛ばした。


「な、何が!何が!起きている!」

森の中を転がるカレンの目が、空に昇っている2つの太陽を映した。

一つは、勿論…地球を照らす恒星である。


そして、もう一つは…全身を赤い炎で包み、両手に鉤爪をつけた…人間だった。

いや、人間と呼べるのかは、わからない。

「ああ…」

カレンは、その人間を見た時…恐怖で嗚咽した。