飛び込んできたのも、全裸の女だった。

咄嗟に、女の膝蹴りを肘当てで防いでいた。しかし、ティアナは肘当てに違和感を感じ、慌てて体から外した。

地面についたその瞬間、肘当ては沸騰し、強化セラミックでできた表面に泡ができた。

「!?」

ティアナは絶句した。

生身の部分で受けていたら、大変なことになっていた。

(これが、魔神との戦い)

想像もつかない能力を持っている。少しでも気を抜いたら、即…死に繋がる。


「お、お前は!?」

驚いているのは、ティアナだけではなかった。

分散した体を一つに戻した不動も、驚いていた。

突然現れた全裸の女もまた…炎でできていた。

しかし、明らかに…不動やリンネよりは火力が少なく思えた。なぜならば、彼女の体は人間の女のような皮膚感を持っていた。その体を守るように、炎が包んでいるように見えた。

背中にある鰈のような羽がなければ、ほとんど人間と変わらなかった。

女が手のひらをリンネを包んでいる氷に当てると、一瞬で融けてしまった。

氷付けから解放されたリンネは、目の前に立つ女に少し驚いた後、素直に礼を述べた。

「ありがとう…。フレア」

「御姉様…」

瞳を潤ませるフレア。

「馬鹿な!妹の力で、目覚めただと!?そ、それに!」

不動は、フレアを見て、

「あ、あやつには、心がなかったはず!?」

驚きよりも戸惑っていた。

そんな不動よりも、動揺している人物がいた。

それは、ティアナだ。

敵が、1人増えただけではなく…もう1人の騎士団長であるリンネも目覚めてしまった。

これで、ほぼ勝ち目はなくなってしまった。

と、誰もが…そう思うだろう。

しかし、ティアナは違った。

ライトニングソードを握り締めながら、リンネ達を観察していた。

「先輩!」

ジャスティンが叫んだ。

「クソ!」

無駄だと思うが、手を貸そうとクラークが一歩前に出た瞬間、ティアナが低い声で叫んだ。クラーク達を見ずに。

「邪魔しないで!」