「なんてやつだ!」

少し離れた場所までジャスティンを引きずって移動したクラークは、不動の能力に唖然としていた。

「ここのままでは、やられるぞ!」

無数の不動に囲まれるティアナを見て、炎天下でも冷や汗が流れていた。

「その簡単には、やられないよ。先輩はな」

砂場に、石化した足をめり込みながら、ジャスティンは目を細め、

「やはり…魔力が少ない」

「え」

クラークは、ジャスティンの方を見た。

「分身したからといって、同じ自分ができるとは限らない。やつの魔力が分散している」

「魔力が?」

目だけで、相手のパワーの変化を見抜くジャスティンに、クラークは驚いた。

「先輩も気付いて……いや、最初からそれが目的か」

ジャスティンは、両拳をぎゅっと握り締めた。



「四方八方から、かわいがってあげましょうか?」

分身した不動達が、一斉にティアナに襲いかかろうとした。

「な!何!?」

不動達が同時に叫んだ。

「い、いつのまに!?」

不動達の足下が凍っていたのだ。

「し、しかし!すぐに、融かして……!?」

不動達が体温を上げて、氷を融かそうとした時、ティアナは走り出していた。不動達の間を。彼らには、目もくれずに。


「そうか!まずは、確実に倒す為にか!」

クラークが感嘆の声を上げた。


ティアナは真っ直ぐに、氷付けになっているリンネに向かった。

今の状態で、彼女に剣を突き刺し、雷撃で爆破すれば…倒せるはずだ。

「さ、さ、させるか!」

不動達は氷を融かすと、ティアナに向かって走り出した。


「遅い」

ジャスティンは呟いた。

不動がティアナを掴むよりも速く、ライトニングソードは突き刺さるはずだった。

突然、横合いから飛び込んできた影に邪魔され、ティアナは吹っ飛んだ。

何かが向かって来たことはわかっていたが、リンネを倒すことを優先した。それなのに、あと数センチ届かなかった。

「チッ!」

ティアナは舌打ちした。