「そんなことだけ…覚えてやがって!」

クラークの目から、涙が流れた。

「いやあ〜。美しい友情ですか」

不動はまた拍手をした。

「クッ!」

ジャスティンは、不動を睨んだ。

「だけどね。無駄ですよ」

不動は拍手をやめると、2人に微笑んだ後、

「2人とも、生け贄です。我が同胞…炎の騎士団長リンネに、捧げるね」

リンネに向って手を差し出すと、 命じた。

「さあ!2人を殺すのです!」

ただずっと、突っ立ていたリンネの虚ろな目が初めて、動いた。

「…」

その目に、ジャスティンとクラークが映る。

「クソ!」

クラークは、リンネの方を見れなかった。ジャスティンが守ってくれたのに、 見たら…自分も石になる。

舌打ちしながら、ジャスティンは心の中で考えていた。

(チェンジするか?)

親友のジャスティンにも教えていない…クラークのもう一つの姿があった。

その姿になれば、魔力を使えるようになる。

頭の中で、変身した場合でシミュレーションしてみた。

しかし、それでも…この場から逃げれるかどうかだった。

もちろん…ジャスティンを置いてだ。

(できるか!)

即答で否定したが…それと同時に、もう一つの声がした。

(こんなところで…死ぬつもりか?)

その声は、心の中で大きさを増した。

(いずれ…お前は、人間の長になりたいのだろ?)

その声に、クラークは唇を噛み締めた。

(化け物になる前にさ)

自分の声が、自分をあざけた。

「畜生!」

クラークは、実際に声に出した。

ジャスティンの前に立つと、短剣を不動に向けた。

「ジャスティン!お前より先には、死なん!」

「クラーク!逃げろ!」

「黙れ!」

クラークはジャスティンを一喝すると、不動を睨み付けた。