「少なくとも…あなた方は、馬鹿ではないようだ」

クラークの背中に、戦慄が走った。再び震えが止まらなくなった。

「ククク…」

不動は含み笑いをもらすと、横に立つ全裸の女に目をやった。

「まだ…目覚めたばかりの我が同胞は、意識がはっきりとしていない」

「何!?」

不動の言葉に、クラークは思わず女の方を向いた。

「クラーク!」

そばにいたジャスティンが、叫んだ。

「フッ」

不動は笑った。

「え…」

クラークが女の方に顔を向けた時、目の前にジャスティンが飛び込んできた。

「完全に目覚めるには、人間を殺すのが、一番だ」

不動は、女を見た。

炎でできた女の髪の毛が、無数の蛇と化していた。

「や、やはり…この能力か…」

クラークの盾となりながらも、ジャスティンは女を見ないようにしていた。

しかし、視界の端に映ってしまったのかもしれなかった。

「ジャスティン!」

クラークは、目の前に立つジャスティンの下半身が…石になっていることに気付いた。

「石化能力か」

ジャスティンは、逸らした目で自分の下半身を確認した。

「素晴らしいだろ?」

不動は両手を広げ、

「炎の能力以外に、こんな能力があるのだよ。彼女が完全に目覚めた時、我々炎の騎士団が、魔王軍最強の部隊になるのだ」

不動はゆっくりと、2人に近付いていく。

「君達は…彼女の礎になるのだよ。名誉なことだろ?」

「何が名誉だ!」

ジャスティンは顔を上げ、不動を睨んだ。

「ほざいたところで…」

不動は楽しそうに、微笑んだ。全身炎の癖に、温度差か何かで多彩な表情をつくっていた。

「君はもう…逃げれない」

「クソ!」

足を封じられたら、ジャスティンの技はほとんど使えない。

「ジャスティン!」

短剣を握り締めるクラークに、ジャスティンは叫んだ。

「逃げろ!お前だけでも!」

その言葉に、クラークはキレた。

「何を言ってる!俺を庇って…こんなことになったのに!」

「それは、俺の勝手だ!戦いの場で、使えないやつは切り捨てろって!学校で習っただろ!」