「ジャスティン!」

「さあ!どこでもどうぞ」

不動は、両手を広げた。

「は!」

ジャスティンは決して、止まることはなかった。

不動の目の前に来た時、止まるのではなく、全スピードと体重と力を右足に込め、砂の大地を踏み締めた。

砂に埋もれた右足から、返ってきた力を腰から肩に送り、今度は肩から腕に捻りを加えながら、突きだす拳に込める。

不動の鳩尾向けて、突きだしたスピードよりも、今度はさらに速く拳を抜いた。

その瞬間、力だけが空気に伝わり、それが不動に炸裂した。

「チッ!」

ジャスティンは舌打ちした。足場が砂だったこともあり、パワーが数段落ちてしまった。

それでも、空気の渦が不動の着ていたスーツに穴を開け、その先にある不動の体も、渦に巻き込まれ、捻られて散り散りになっていく。

「魔神ならば、手加減なしだ!」

ジャスティンは、後方に下がった。

「面白いことをする」

不動の鳩尾に穴が空いた。

「しかし…」

不動は笑った。

「まだだ!」

下がるジャスティンの後ろから、クラークが飛び出して来た。

「喰らえ!」

短剣で、砂に落ちた不動の影を切った。

しかし、切れたのは…かろうじて残っていたスーツの部分だけだった。

「馬鹿目!炎が切れるか!」

不動は叫ぶと、着ていたスーの生地は一瞬で燃え尽きた。

「くそ!」

慌てて、クラークも後方にジャンプした。

その様子を見ながら、不動は2人に拍手した。

「それでも、なかなか大した攻撃でしたよ」

不動は、まずはジャスティンを見て、

「拳圧で、炎を拡散することも」

それからクラークに目をやり、

「特殊能力での迷いない攻撃も」

満足げに頷いた。

「実によかった」


「クッ!」

クラークは唇を噛み締めた。

「本当によかったですよ!ここに来てね!正解でした!」

不動はさらに激しく拍手をした後、また2人を見つめた。

「王が破壊した直後に、その場所に駆けつける人間は…よっぽどの馬鹿か…相当の実力者のみ」

炎の魔神である不動の目に、氷のように冷たい色が浮かんだ。