「それにしても…」

元老院跡に来た少年は、何もない砂漠と化している状況に、呆然としていた。

「どうやったら…こんな状態にできるんだ」

元老院は、小国ぐらいの大きさがあったはずだった。

なのに、何もなくなっているなんて。

一応周りを確認してみるが、地平線の彼方まで何もない。

後ろを向くと、地中海が遠くに見えた。

「神レベルの仕業だな」

少年から数十メートル離れた場所で、日除けようのフードを被った少年がしゃがみこみ、足下の砂を掴むと、手のひらを広げて、砂粒を確認していた。

「一瞬で…粒子レベルまで、分解されている。ここに堆積されている砂は、元老院の建物や…人間の成れの果てだ」

「え!?」

その言葉に驚き、慌ててその場から離れようとする少年の動きに、フードの少年は笑った。

「ここまで分解されれば…単なる砂だ。例え…何であったとしてもな」

フードを取ると、まだあどけなさが残る顔をしかめた。

日差しを防ぐ建物もない為に、真上にある日光が直撃していた。

「チッ」

舌打ちすると、再びフードを被った。

「ジャスティン…。お前は、眩しくないのか?」

砂を避けることをやめると、足下に向かって手を合わせる少年に訊いた。

少年の名は、ジャスティン・ゲイ。

フードを被った…色白の少年の名は、クラーク・パーカー。

「鍛えているから」

胸を張るジャスティンに、クラークは顔をしかめた。

「理由になるか」



元老院本部の消滅はすぐさま…十字軍にも報告された。

しかし、その消滅の仕方から、攻撃した相手を確定した十字軍本部は、隊を動かすことをしなかった。

もし、出撃したところで…全滅するだけである。

それよりも、元老院の消滅により失った立法と政治の権限を、十字軍に持ってくる方が大事だった。

権力の集中。

失ったものよりも、これから得るもののことを考えて、十字軍本部は慌ただしく動いていた。