そんなことを考えながら…ライは、アスカを殺すことを決めた。

王宮も破壊した。彼女に、戻るべき場所はない。

それにだ。

アスカの肉体は、貧弱過ぎた。

純白のドレスで着飾り、誤魔化しているが、野に出て生きていくのは、到底無理だった。

神として、祀るだけならいいだろうが…。

(できるだけ…痛みを感じさせずに…)

一瞬で、殺してやろう。

ライがそう決めた時、玉座の間に、誰かが入っていた。

「失礼します」

玉座の間に入るとすぐに、跪いたのは…魔神サラであった。 赤い髪に、二本の角を持つ魔神は、ゆっくりと顔を上げた。

「何だ?」

玉座に座り直したライの目が、もとに戻った。

「は!」

サラはもう一度、頭を下げた。視界の隅にアスカが映ったが、気にせずに…言葉を続けた。

「新たなる女神が、目覚めた模様です」

「そうか…」

ライは、頷いた。

「…」

サラを見て、目を丸くしているアスカを尻目に、ライはサラに命じた。

「連れてこい」


ライは、魔王の部隊を三つに大きく分けるつもりでいる。

空、海、陸地である。

海と陸地を担当する部隊である騎士団は、編成が終わりつつあった。

空だけが、未だになかった。

いや、あることはあった。

それは、魔王であるライの直属部隊を意味していた。

いつまでも、自分が率いている場合ではない。

ライは、空の女神を生み出そうとしていた。


「な」

しかし、目の前に姿を見せたのは…炎を身に纏った女神だった。

「な、なぜ…炎の属性の女神が生まれた!?」

「そ、それは…」

唖然とするライに、サラは顔を逸らした。 しかし、それを悟られないように、頭は床につくほどに、深々と下げていた。

サラには、わかっていたのだ。そういう反応になることが。

なぜならば、現れた女神は似ていたのだ。

ライの…空牙の母親に。