アスカに手を向けながら、男はじっと…彼女の目を見つめていた。

「や、やめろ!」

ゲイルは、神官が持っていた杖を拾い上げると、男に向けた。

杖の先が輝き、雷撃が放たれた。

「きゃ」

ここで初めて、アスカは悲鳴を上げた。

杖から放たれた電気の放電が、まるで意思を持っているかのように、空間に蠢いたからだ。

「フッ」

男は、口元を緩めた。

放たれた雷撃はすべて、男に当たった。

しかし、男は微動だにせず、杖を向けたまま…愕然とするゲイルをちらりとだけ見た。

「一番無意味な…攻撃を」

そう呟くと、男は足元を見た。

「成る程…妖精達をこの下に、閉じ込めているのか。だから、魔力を使えるのか」

「き、貴様は…な、何者だ!」

ゲイルは、まったくダメージを受けていない男を見て、恐怖から杖を落とした。

「ヒイィ!」

ゲイルは悲鳴を上げ、尻餅をついた。

「長老!何事ですか!」

その時、穴の向こうから声がした。

王宮に穴が空いたことに気づいた元老院の守備隊が、魔力で空を飛び、その穴から次々に突入してきた。

各々の手には、銃が装備されていた。

「人神よ」

男は、守備隊を無視して、再びアスカに目をやった。

「感情薄き…人形よ。お前に問う」

男の後ろでは、部屋に入ってきた守備隊の銃口が、一斉に向けられていた。

「何を知ってる?」

「え…」

「撃って!」

部屋にまで入ってきた守備隊の数は、12人。

「人神には、当てるな!」

司令官と思わしい隊員に保護されたゲイルが、叫んだ。

12人の引き金が、同時に弾かれた。

「痛みか?」

銃弾は、すべて男の背中に命中した。

「苦しみか?」

それでも、男の表情は変わらない。

「それとも…」
「わかりません」

アスカは、口を開いた。

「あたしは…知りません」

ただ…知ってるのは、暗闇の寂しさだけ。

でも、それにも慣れた。

「何を知っている?」

男はさらに訊いた。