「え?」

アスカは、男を見下ろした。

黒い衣服を着た男は腕を組むと、アスカを見上げた。

2人の目があった。

「き、貴様!」

杖や剣を向け、威嚇している神官達を無視するように立つ男に、プライドを傷付けられたと思った2人は、躊躇うことなく攻撃に転じた。

「ま、待て!」

男が入って来てから、まったく言葉を発していなかったゲイルは、慌てて2人を止めようとした。

次の瞬間、2人の神官は互いの攻撃で死んでいた。

黄金の床に、赤い血が流れた。

「ば、馬鹿な…」

ゲイルは震撼した。

男は、何もしていない。

ただ真っ直ぐに、アスカを見上げていた。

「さあ!答えよ!人神よ!」

男の射抜くような視線も、本当ならば…息が詰まるプレッシャーも、アスカにも効かなかった。

というよりも、アスカは男の質問に答える為に、真剣に考えていたのだ。

その集中力が、男のプレッシャーを感じなくさせていた。

「あ、あたしは…一般人とか…人の種類は、わかりません。男と…女…くらいしか…。あまり、人にあったことがありませんので…」

アスカの答えに、男は眉を寄せた。

「それはつまり…人に違いはなく、平等だというのか?」

「平等?それは…何ですか?」

「何?」

アスカとのやり取りで、男は悟った。

「貴様…。こいつは、本当に人神なのか?」

神官達の死体を見下ろし、わなわなと震えていたゲイルに、男は訊いた。

だが、答えないゲイルに、男は顔を向けた。

「質問に答えろ!」

男の目が赤く輝き、ゲイルを睨んだ。

その瞬間、ゲイルの体が少しだけ…はね上がった。そして、本人の意思とは関係ないし、唇が動き…言葉を発した。

「はい」

「フン!」

男は鼻を鳴らすと、アスカに目をやった。

「傀儡か…」

そして、アスカに向けて…手を差し出した。

それを見て、ゲイルは我に返り、

「や、やめろ!彼女を殺したら、血筋が途絶える!」

大声で叫んだ。