ゲイルに案内されて向かった部屋は、あまりにも仰々しかった。

式神を使い、映像に映るところまでを重点的につくられた…まるで、映画のセットのような部屋。

「さあ〜!あちらにお座り下さい」

ゲイルが、アスカを促した。

真ん中にある、純白の真珠のような玉座。

神は、あんなものに座るのだろうか。

部屋の床よりも、数段高く設置された…その玉座こそが、傲慢ではないのか。

そうアスカが、思った訳ではない。

ただ…彼女は、自分がさらに閉じ込められているように思っただけだ。

(あの子も…幸せではなかったのですね)

光と闇という違いはあった。だけど、光の下で照らされていながら、人々の目に晒されることの方が、苦痛であったのではないだろうか。



「どうなさいました?」

「え…」

玉座に座ったアスカの目から、一筋の涙が流れた。

「それほど、嬉しいですか」

涙を見て、満足げに頷くゲイル。

「そ、そうでは…」

アスカは無意識に流れた涙に驚きながらも指で拭い、初めて否定の言葉を口にしょうとした。


その時、彼は来た。

アスカの目の前に…。


「お前が…神か?」

完璧だと思われた結界をいとも簡単に突破し、王宮の外からアスカのいる部屋まで一瞬で穴を開け…彼は、現れた。

「何者だ!」

ゲイルと2人の神官は振り返り、自ら空けた穴を歩いてくる男を睨んだ。

「ああ…」

アスカは、穴が空いたことよりも…そこから見える外の薄暗さに驚いていた。

(外も…明るくないのね)

逆光の形になった為、近付いてくる男の表情はわからなかった。

「何者だ!」

神官の1人が、杖を手にし、

「一般人に…ここまでの魔力を扱えるはずがない!何をした!」

近付いてくる男に向けた。

「禁呪でも使ったか!」

もう1人の神官は、白装束の中から、剣を取り出した。

「一般人か…」

部屋に足を踏み入れた男は、笑った。

そして、アスカを見て…こう言った。

「お前も、そう見えるか?」