元老院の長老である彼女の祖父…ゲイル・アートウッドの力で、ティアナの行方を捜索したが、まったく足取りを掴むことはできなかった。

しかし、彼女の名は…一年後、元老院にも知れ渡ることになる。

勇者…ティアナ・アートウッドとして。

魔法をまったく使わずに、剣だけで魔物を倒す…剣士として。

まだ十歳にならないのに、魔神と互角に戦っただの。 辺境の国を襲った魔物の大軍を、たった1人で殲滅しただの。

その話題は、人々の間で話題になり…いつしか、勇者ティアナ・アートウッドの名は、民衆の中に広がっていった。


「そう言えば…ここ数年は、伝説の武器を探して、世界中の秘境を巡っていたと」


「バンパイアキラーか…」

ゲイル・アートウッドは、呟くように言った。

「そう言えば…その研究を、さらに詳しく説明する為に、ここに数年ぶりに戻ってくると」

「それが…戻って来ておらんのだ!!」

ゲイルは思わず、大声を出した。

「ヒィィー!」

あまりの剣幕に、神官達は足を止めた。

「あのじゃじゃ馬め!どこで道草をくっているやら…」


そうこう話している間に、3人は回廊を抜けた。

結界が空も被っている為に、晴れているといるのに…見上げれば、天は薄暗かった。

なのに、前を向くと眩しかった。

王宮と言われる建物は、ピラミッドにそっくりであるが…表面が違った。

金を合成して、積み上げた姿は圧観であるが、どこか悪趣味だった。

しかし、人間が欲望でつくったとすれば…とても似つかわしい姿だ。

「行くぞ」

回廊を出ると、王宮の周りが大量の砂で守られており、一般の人間が足を踏み入れれば…あっという間に、砂の中に沈んでしまう。

掴むところもない為に、二度と浮かび上がることはない。

しかし、神官以上の人間が、砂の岸辺に立てば…王宮から黄金の橋が伸びてくるのだ。