「では…いってらっしゃいませ」

タキシードの男に見送られながら、九鬼は穴蔵の壁に開いた異空間への光の道に、飛び込んだ。

「真っ直ぐ…その道から、落ちない限り、ブルーワールドに着きます」

「落ちたら、どうなる?」

「砂の世界から、抜け出せないでしょ」

「砂の世界?」

「はい」

そんな会話をしている間に、今いた世界への穴が塞がった。

もう前しかいけない。

九鬼は消えた穴に、頭を下げると…光の道を走り出した。

ブルーワールドに向けて。






「やっと言ったか」

タキシードの男は、閉じた空間を睨んだ。

次の瞬間、タキシードの男は…大月学園の屋上にいた。

九鬼がいなくなった為、空間が追い出したのだ。

外はもう…夜になっていた。

「我が身にかかった最初の封印は、ブルーワールドでしか解けないからな」

タキシードの男は、鼻を鳴らした後…深々と頭を下げた。

「さらばだ…イナオの創りし世界よ。人間臭い世界よ」

そして、月を見上げ、

「悲しみと憎しみで、身を焦がせ!」

満面の笑みを浮かべた。