「坊や…しっかりと掴まっておくんですよ」

大きくなった浩也を抱えながら、フレアは魔物の周りを逃げ回る。

だが、ただ逃げている訳ではない。

炎の手裏剣を、木々に当たらないように周囲に投げていた。

「甘いわ!」

木々を盾にしながら、カラス天狗の群れが近づいてくる。

「このような攻撃!無意味なり!」

自分の背丈よりも大きな鎌を握りながら、カラス天狗達はじりじりと間合いを詰めてくる。

「は!」

フレアの手から、炎が噴射されたが、カラス天狗達の前に一匹の魔物が現れた。

「効かぬわ!」

炎でできた壁のような魔物が、盾となってフレアの攻撃を防いだのだ。

「貴様の炎は、我ら炎の騎士団の防壁!ムエン隊の前では、無力なり!」

ムエンが笑った。


「え!」

フレアの動きが止まった。

いつのまにか、四方を…炎の壁が塞いでいた。

「己の非力な火力を嘆くがいい!」

ムエン達は、じりじりと包囲を縮めてくる。

「ケケケ!」

その後ろで、カラス天狗達が鎌を構えていた。

「お母様!」

「大丈夫!」

フレアは浩也を抱き締めると、真上に飛び上がった。

「そうよな!逃げ道は、上しかない!しかし!」

カラス天狗のリーダーは、口許を緩めた。


森を突き抜け、太陽の下に身を晒したフレアの周りを、翼ある魔物達が囲んだ。

「やる!」

フレアは驚くことなく、群れに向かって体を捻りながら、飛び込んでいた。

炎と化した足の脛が、翼ある魔物の首筋にヒットすると、魔物の体液が沸騰し、燃え上がる。

「はあ!」

次々に回し蹴りを放つフレアを見て、周りを囲む魔物達は笑いながら、左右に離れ、空中に道を作った。

「!?」

その行動に驚いたフレアは、危険を感じ、すぐに回避しょうとしたが、 時はすでに遅かった。

開いた道の向こうから、音速を超えた何が飛んできて、フレアに直撃した。

すると、フレアの炎が消え…彼女は地上へと落ちていった。