そして、あたしは…待ち合わせた場所の公園で、見てしまった。

「相原…」

乙女ブラックの拳が、中島の胸から背中まで貫いている姿を。

「中島!」

土砂降りの雨でできた障害物を掻き分けて、あたしは中島のもとに走った。

「来るな!」

中島は口から血を流しながらも、絶叫した。

「来ちゃ…駄目だ…」

思わず…変化しょうとした体を抑え、中島はあたしに向かって笑って見せた。

「り、理香子さん…」

それが、中島が…あたしの下の名前を呼んだ最初だった。

そして…それが、最後になった。


乙女ブラックが胸から腕を抜くと、中島は鮮血を撒き散らしながら、倒れていった。

そこから、あたしは覚えていない。

ただ…乙女プラチナに変身して、乙女ブラックに襲いかかった。


「許さない!」




あたしは、わかっていた。

月影の力は、人々を守る為にあるんじゃなくて…中島を守る為にあることを。

少なくても、その為に…あたしは創ったのだ。

それなのに…。

中島を殺した…乙女ブラックは振り返り…にやりと笑った。

その顔は、明らかに真弓だった。

あたしはずっと…真弓といっしょに、中島を守っていきたかった。

それなのに…真弓は裏切ったのだ。

あたしの与えた力を使って。

「許さない!真弓!」

あたしは、逃げる乙女ブラックを追いかけた。

「逃げるな!」

あたしは、乙女ブラックの背中に叫んだ。

「よくも、中島を!絶対!」

激しい雨の中、初めてあたしは…憎しみの涙を流した。

「殺してやる!」



あたしの中で、何かが壊れた。

それは、粉々になり…元に戻ることは決してない。

あたしは激しい雨の日…愛する人と親友を失った。

そして、すべてを奪った九鬼真弓自身を殺すことを誓った。

例え…どこに逃げても、必ず…この手で殺すことを誓ったのだ。