「虫けら?」

闇の言葉に、九鬼は眉を寄せた。

「我等は、この世界のものではない!神話の時代!月とその使徒達に、肉体を破壊されたもの!」

他の闇が、言葉を続けた。

「魂だけの存在になるも!」

「人の身体を奪い、今も生きる存在なり!」

「何!?」

絶句した九鬼の後ろにある民家や、マンション…路地裏に服だけが落ちていた。

「それが!貴様らのいう本来の闇の姿だ!」

魔物達は、一斉に九鬼を睨んだ。

「く!」

九鬼は構えようとしたが、バランスを崩した。

踏みつけていた三つ目の女が、力任せに顔を上げたのだ。

よろめきながらも、九鬼は後方にジャンプした。

「八つ裂きにしてやる!」

三つ目の女が、血走った目で、九鬼を睨んだ。

「八つ裂きには…するな」

三つ目の女のそばに、中年の小太りの男に寄生して、体から無数の針を生やした闇が近寄った。そして、九鬼に聞こえないように囁いた。

「わかっておるわ!」

三つ目の女が吐き捨てるように言うのを確認すると、針を生やした闇が一歩前に出た。

「九鬼真弓!いい事を教えてやろう!」

針を生やした闇は口許を歪め、九鬼を見つめると、

「我等の仲間が、この先の公園に向った。なぜだか、わかるか?」

「!」

九鬼は構えを解かずに、その闇を睨んだ。

「答えは、簡単だ!そこにお前達の仲間が、いるからだ!」

針を生やした闇の身体が、数倍に膨らむ。

「いかなくていいのか?」

「貴様ら!」

「だが、他人の心配をしてる場合ではないな」

針を生やした闇はにやりと笑った。

その闇の後ろにいるもの達は、まだ人間の原型を留めていた。しかし、笑い声とともに、次々に変化していった。