「雨か…」

滑り台やブランコ…砂場が揃った公園。その中央にベンチがあり、屋根がついている為、多少の雨からは避難できた。

だけど、激しさを増した雨と横殴りの雨が…制服を濡らしていた。

暗くなりだすと、公園に外灯が灯った。

防犯の為なのか…その灯りは眩しい程だ。

いや、違う。

激しい雨が、スクリーンのようになり…輝いているのだ。

中島は、ライトアップされたようなベンチの前に立ち、理香子を待っていた。

本当ならば、こんな天候だし、明日にでもしたらよかったのだが…中島は、今日告げようとしていた。

なぜならば…明日になれば、気が変わるかもしれないからだ。

理香子の笑顔を見れば…気が変わる。

今ある幸せを、手放したくなくなるかもしれない。

だけど、それが一番いけなかった。

(彼女と…俺は、住む世界が違う!)

中島は思わず目を瞑り、顔を背けた。

(だけど…それはいい!仕方ない!だけど…彼女が利用されることは、防がないといけない!俺を使って!)

中島は目を開けると、理香子が来る方向に、顔を向けた。

逃げてはいけない。

例え…彼女を失っても。



「中島…」

雨のスクリーンの向こうに、影が揺らめいた。ゆっくりと誰かが公園に入ってきた。

そして、スクリーンの裏側で足を止めた。