「今から…貴様に、地獄を味あわせてやろう」

上着の中から、真っ黒な煙のような闇が染み出してきた。

「それは、愛という地獄!互いに愛するが故に、憎み合う!」

染み出した闇は、タキシードの男の後ろで、各々の色と形を作り出す。

「互いが、大事だったから!許せなくなる!殺したくなる!」

タキシードの男は、にやりと笑い、

「愛というお前達の力の源で…滅べ!」

「きえええ!」

形作った闇の一体が、奇声を上げた。

「行け!闇の眷属よ!肉体を失いしも、月と人間への復讐の為に、存在する…我が僕達よ!!」

タキシードの男の着ている衣服類が、繊維に分解され…さらに細かい闇の粒子になる。

次の瞬間、タキシードの男の体を包んでいる服が変わった。

服だけではない。 男自体が変わった。

「いくわよ」

闇の眷属の前に立つのは、もう男ではない。

黒い戦闘服を身に纏った……九鬼真弓そのものだった。

乙女ブラック…いや、乙女ダークと言うべき存在は、後ろに蠢く闇の眷属が、周りに散った後、自らもビルから飛び降りた。