「フン!雑魚しかいなかったか」

ピュアハートから放たれた斬撃によって、周囲にいた魔物達をすべて倒したことを確認すると、カレンは女に顔を向けた。

「話の途中だったわね。それで一体…」

カレンの言葉が言い終わる前に、女は跪いていた。


「偉大なる勇者様に、お願いがございます!あたし達の村を助けてほしいのです!」


「あたし達の村?」

カレンは、さらに周囲を確認した後、ピュアハートを首からかけている十字架のペンダントの中にしまった。

「そうです!魔神ムゲに狙われている!あたし達の村を!」

女の叫びに、カレンは眉を寄せた。

「魔神ムゲ…」

「そうです!108の魔神の1人です!」

女の言葉に、カレンは拳を握り締めた。

(魔神だと!)

カレンの手のひらに、汗が滲んできた。

「108の魔神と戦える人間は、殆どいません!だから…」

女は目を伏せ、

「赤星浩一さんか…ジャスティン様を期待したのですが…」

がっかりしたような物言いが、カレンのプライドを傷つけた。

(馬鹿にしやがって〜)


もともとレベルアップの為に、ここに来たのである。

108の魔神の1人で戦えるのは、願ったら叶ったりである。

騎士団長ならヤバいが…その下のレベルの魔物なら、今の自分から何とかなるはずである。

それに、真の勇者になる為には、この戦いは避けれない。

カレンは一歩前に出て、少し不安そうな女に言った。

「あたしを、村に連れていけ!魔神を倒してやる」

自信満々で言ってみたが、女はカレンを見つめ、

「は、はい…。ありがとうございます…」

どこか抜けた返事をした。

「…」

カレンの全身が、わなわなと震えてきた。

怒りがこみ上げて来たのだ。

「村はどこだ!」

カレンは女を残して、歩きだした。

「そ、そっちじゃありません!」

女は慌てて、後を追った。