「これを…真弓達も持っているんだ」

あたしはまじまじと、乙女ケースを見てから、はっとした。

「中島!」

あたしの声に振り返った中島の目に、生気はなかった。

ただ冷たく…悲しい目をしていた。

「な、中島…」

それだけで、あたしは息が詰まり、何も言えなくなかった。

やはり、怖い思いをしたし…もしかしたら、戦闘中にあたしの気づかない内に、怪我でもさせたかもしれない。

それに…。

あたしは、乙女ケースを握り締めた。

(こんなものを…)

いろんなことが、頭の中に浮かび上がり…軽くパニックになりかけていると、あたしを見る中島の目の色が、変わった。

優しく温かい瞳で、あたしを見つめ、

「ありがとう」

一言そう言った。

そこにいるのは、いつもの中島だった。

それだけで、あたしは笑顔になり…安心する。

ほんと…あたしは、駄目な子だった。

この時も…あたしは、あたしのことだけを考えていたのだ。

中島のことなんて、考えてなかった。

身勝手な恋。


「帰ろうか」

中島の笑顔だけにとらわれていた。優しい言葉だけに包まれて、嬉しかった。

あたしは駄目な女。

「うん!」

頷き、手を繋ぐこともできない恥ずかしさと嬉しさを抱いて、あたしは中島と歩き出した。

それが、悲劇へと向っていることを知らずに。