「共有って…共有って…」

絵里は、同じ言葉を繰り返した後、きゃああと悲鳴を上げた。

頭をかきむしり、

「わ、わたしの赤星君が!いやああっ!」

狂ったように叫び出した。

「あたしの赤星って…。てめえ!明菜以外も、女が!赤星の分際で!」

アルテミアの怒りにも、火がついた。

「違う!この子は違う!いや、明菜も違う!」

あまり女性関係で悩んだことのない僕は、パニックになった。

「フン!」

アルテミアは鼻を鳴らすと、右手を横に突きだした。

回転する2つの物体がどこからか飛んできて、アルテミアが掴む寸前に合体し、槍となった。

「まあ〜いい。こいつを始末してから、後でゆっくりてめえの処分を決めてやる!」

槍を一振りするアルテミア。

恐怖で、震え上がってしまっている僕だが、今はこらえなければいけない。

「やめてくれ!アルテミア!この子は!」
「うるさい!女たらし!」

アルテミアは一喝すると、

「こいつは、人間を喰った!その味を覚えたやつが、まともになれるはずがない!」

「だ、だけど!」

「お前だってわかるはずだ!バンパイアとして、血を吸ったことがあるなら!」

「あ…」

僕は何も言えなくなった。

脳裏に、僕を庇って死んだメロメロの言葉を思い出した。

(バンパイアに血を吸われた者は…そのバンパイアの中で生きることができる。これからは、兄貴の中で生きるメロ)

僕は思い出していた。


(そうだ。その覚悟がないと…人ではいれない)

黙り込んだ僕に、アルテミアは言った。

「こいつには、無理だ」



「返してよ!」

絵里は、アルテミアにすがりついた。

「返してよ!返してよ!わたしに、彼を!」

アルテミアの白いドレスに、絵里の体液がまとわりつく。

「あなたは、女神なんでしょ!力もある!美貌もある!だけど!あたしは…」

絵里の目から、涙が流れた。

「彼しかいないの!彼となら…その姿でも一緒にいれる!」

絵里は嬉しそうに目を輝かせ、

「だって…彼も化け物だから」