「まったく!昔の女か知らないが!デレデレしやがって!」

アルテミアは登場と同時に、機嫌が悪い。

「別に、デレデレは…」

今度は、ピアスから僕の声がした。

「赤星君?」

状況が理解できない絵里は、尻餅をつきながらも、僕を探した。

「あたしが止めなければ、何をされるつもりだった!」

「え!な、何って」

口ごもってしまった僕に、アルテミアはキレた。

「気色悪い!この体は、あたしも使ってるんだからな!別々だったら、消毒がてらに、消滅させてやるのにな!」

「死ぬよ…僕…」

「むしろ、死ね!」

一言そう言った後、アルテミアは絵里を睨んだ。

「てめえ!あたしの体を傷物にしやがって!どうなるか〜あ!わかってんだろうな!」

手を組み合わせ、ぼきぼきと鳴らした。

その仕草や口調は、明らかにチンピラだが…絵里は、目を見張っていた。

「天空の女神…」

この世のものとは思えない美貌が、口調と仕草を切り離し…まるで、別々のように思わさせた。

「あ〜!」

怒りで顔も歪んでいるのだが…不細工にはならない。

それがかえって…怖いと、ブルーワールドでは評判だった。

だけど、絵里の反応を見ると違うらしい。

「ブロンドの女神…」

絵里は立ち上がると、アルテミアを見て、

「ネットで話題になる訳だわ。でも、わたしにはどうでもいい」

そう言うと、周りをキョロキョロと見回し、

「赤星君!赤星君は、どこに言ったの!」

僕を必死で探し出した。

その様子に、顔をしかめたアルテミアがピアスを指差しながら、

「赤星なら、ここだ。厳密には、ここではないが…意識を分ける為に、今はこの中だ。あたしが、体を使っているときはな」

「え」

アルテミアの言葉に、絵里の動きが止まった。

唖然としながら、ゆっくりとアルテミアの方へ顔を向け、

「体を使っている?」

おもむろに訊いた。

「ああ〜!そうだ!あたしは、赤星と体を共有している」