まったく変わらない浩一を見たのだ。

その姿を思い出していた明菜に、絵里が話しかけた。

「そっか…知らないのか…残念!」

と言うと、絵里は左肩を上げ、

「別は…高校の時から、気になっていたんだ。赤星君のことだから、気になって」

「え!」

思わず声を荒げてしまった明菜。

「そ、そうなんだ…」

「意外かな?彼って…最初は頼りなかったけど、いなくなる前は結構…凛々しくなって…。何があったんだろうって、気になったんだよね」

「そ、そうだったかな」

明菜は、俯いてしまった。

「だから、明菜なら…今何してるのか…知っているかと思って」

絵里は、俯いている明菜の髪の毛を見つめ、

「幼なじみだから」

目を細めた。

「ご、ごめん!知らないんだ…」

明菜は、テーブルを見つめながら謝った。

「いいのよ。ただ気になっただけだから…。ありがとう」

その時、2人の間で携帯が鳴った。

「あっ!メールだわ」

絵里は、横にある椅子に置いた鞄から携帯を取りだし、誰からかチェックした。

そして、携帯を閉じると…にやりと笑った。

「ごめん!明菜!ちょっと人と待ち合わせしてて…もう時間だから行くね」

財布を取りだし、お金を出すと、伝票の上に置いた。

「また、連絡するね」

鞄を持つと、席から離れようとする絵里の背中に、明菜が言った。

「でも、あいつが聞いたら…喜ぶと思うよ。あいつ…多分…絵里のことを…」

その言葉に足を止めた絵里は、口元を緩めた。

「――わたしもさ」

振り返ることなく、絵里はこたえた。

「好きだった。多分…初恋」


「そう…なんだ」

声のトーンが下がる明菜に、一呼吸置いてから、絵里は振り返った。

「またね。明菜」

「う、うん」

頷く明菜に、笑顔で手を振ると…絵里はカフェを後にした。