「いらっしゃいませ」

今は普通の人間が辿り着くことはできない…レンガ造りの外装をした小さな茶店。

木製の分厚い扉を開けると、目の前にカウンターがあり、その向こうで笑顔のマスターがお客を出迎える。

扉の横の窓際には、テーブル席が3つあった。

店内には、カウンター席に座るお客一人しかいない。

それでも、綾子達が入ると満席になる。

「テラよ。あなたに、我等の新たなる仲間を紹介しましょう」

店内に入ると、一番先頭を歩いていた男が、サングラスを外した。そして、綾子に向って、頭を下げた。

「待って」

綾子は手で、頭を下げた男を制すると、

「皆、席につけ」

周りで控えている男女達に命じた。

その言葉に頭を下げると、男女達は窓際の席に座った。

「マスター」

それを確認すると、カウンターの向こうのマスターに声をかけたが、

「女神」

頭を下げていた男が顔を上げると、カウンターに振り向き綾子の言葉を続けた。

「マスター。皆にコーヒーを」

「かしこまりました」

マスタ−は頭を下げた。

「さあ!テラよ!こちらの方へ」

カウンターの前の椅子を引こうとした男に、綾子は言った。

「山根…。その前に、さっさとすませたい」

腕を組み、カウンターに座っている学生服の女の背中を睨んだ。

山根はカウンターから、離れた。

すると、座っていた女が椅子から降りた。

振り向くと、深々と頭を下げた。

「この子は?」

綾子は、目を細めた。目の前の女は知らないが、着ている制服は知っていた。

「は!」

山根は頭を下げ、

「平城山加奈子と申す…女子高生でございます。彼女は、完全に目覚めております。それも、強力な竜の因子に」

「竜の因子?」

綾子は、頭を下げたまま動かない加奈子を見下ろした。

「加奈子君。顔をあげたまえ!そして、君のもう一つの力をお見せするのだ!」

「はい」

顔を上げた加奈子の顔に、妖しい笑みが浮かんだ。

茶髪に、緑のカラーコンタクトをつけた加奈子を、訝しげに見る綾子に向かって、腕を突きだした。

「装着!」