「どうかしたのか?」

巨人の前を歩く…屈強な体躯をした女が振り返った。

「何でもない」

巨人はただ前を見て、歩き続けた。

女の横を通り過ぎる時、呟くように言った。

「少し珍しいものを見たが、支障はない」

「そうか…」

女もそれ以上きかなかった。

道を歩く二人の姿は、異様に目立ったが、目立ち過ぎた。

人々は一瞬だけ、目をやるが…すぐに視線を外した。

見てはいけないと、人の本能が告げていた。

その反応は正しかった。

彼等の名は、ギラとサラ。

その気になれば…指先で町を消滅できたのだから。

「いくぞ」

ギラの言葉に、サラは頷いた。

「雑魚に構っている暇は、我等にはない」

実世界の人混みを歩く魔神。

その違和感さえ、世界は認めつつあった。

変革の予兆に、空気が震えていたが、町のざわめきと光が、人の感覚を鈍らしていた。

そう…人は気付かない。

己の死が、目の前に来るまでは…決して。